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2008年6月26日 (木)

植物エネルギー 第212話 ~漢方薬用植物講座 「漢方に学ぶ病気予防 ~自然と調和する~」~

 (社)北海道薬剤師会会誌「道薬誌」に連載中(10回の予定)の漢方薬用植物講座の4月号の原稿をそのままブログ上アップします。題して「漢方に学ぶ病気予防」です。

 3月の原稿を書き終えた時に札幌薬剤師会の北・東支部の小寺先生「漢方・薬用植物講座」というお題もいただきました。かなり気に入っています。ありがとうございました。
 実は13年前まで私は。北大・薬学部で有機合成化学を極めるための修行を15年半ほど続けていました。その時は自分でも気がついてはいなかったのですが、心と体が相当不健康そのもので、今振り返ってみると漢方でいう気鬱、気滞、肝鬱、?血・・・の極みでした。その後、色々な人のおかげで北海道医療大学薬学部生薬学教室に移り、一転して北海道の野山へ出かけ植物(薬用植物、野菜、果物、穀類、その他植物に関係することならなんでも)を知るための勉強と実践を続けてきました。そして、どうしても漢方の考え方も学ばなければと思い、ここ4年ほど前から札幌市新琴似にある憲仁会牧田病院の今井純夫医師と薬剤師さんたちに漢方を月1回ほどのペースで教えていただき、その考え方を21世紀の病気予防、食育、心の元気と身体の健康、西洋薬、植物全てに繋がる説明をしたくて修行を続けています。ちなみに、現在までの修行の成果は、 体重は16Kg減、血液検査は全てAll green状態というに改善しました。まだまだ修行中の身なれば、不十分な知識を疲労することもあるかと思いますが、ご容赦くださいませ。
 さて、今月は漢方の考え方に学ぶ病気予防。この事についてお話したいと思います。
 漢方では病気の予防を強調しています。曰く「聖人というものは、今ある病気をいやすのではなく、発病前にそうならないように予防する。また眼前の乱を平定するのではなく、勃発前もそうならないようにする。そもそも発病後に服用したり、乱の暴発後に平定しようとするのは、たとえてみれば、口が渇いたから井戸を掘ったり、戦争が始まってから、武器をつくるのと同様で、それはなんと遅きに失したことであるか」と。病気予防するには①感情を安定させる。②自然と調和する。③体力を鍛える。伝染病から身を守る。の4つが大切であると説いています。
 中でも『自然と調和する』。このことが現代に生きる私たちに最も欠けていることのように思えます。漢方で最も大切な『気』とは大地に流れる生命エネルギーそのもののことを言います。森の中に息づく全ての植物たちは天空の『気』と大地の『気』を取り入れて『デンプン』と『緑色』を形作っていますから一木一草全て大地に流れるステキな生命エネルギーで、『気』そのものだと私は思っています。だから植物たちの緑色のたくさんある所に行くととても良い気持ちになって、見知らぬ人同士が出会ってもお互いに笑顔で挨拶しちゃうことになるのではないでしょうか?これこそが『ステキなの「気」巡りで』あり、一番の心の「クスリ」であると私は思っています。森林セラピーとか森林浴などは漢方では当然のこととして説明することができます(図1)。

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                      図1
 それでは漢方の考え方に学ぶ春・夏・秋・冬の四季に調和した過ごし方を北海道医療大学・北方系生態観察園の植物たちの写真を使いながらご紹介しましょう。
 
・春『発陳』
 漢方では万物は常に変化するものと考えます。その変化は生―長―化―収―蔵の五運として表されます。すなわち生まれ、成長し、ある時点で転換点を迎えて収束に向かい、余計なものを捨て、必要なものを貯蔵して次の生に備えるというサイクルです。このお手本を最も良く私たちに見せてくれるのが植物たちです。植物たちに四季の過ごし方のお手本を学んでみたいと思います。
 春は発陳(はっちん)といいます。五運のうち「生」のステージです。地面を完全に覆っていた雪が融け、腐葉土がたっぷりの黒々とした豊かな土が太陽の下に現れると同時に、秋から冬の間に準備されていた植物の種子や球根が次々と芽吹きます。冬の間完全に葉を落としていた落葉樹の枝に準備されていた冬芽からは、新しい若葉が次々と展開します。
 植物たちが私たちに教えてくれる、春の正しい過ごし方とは、

1.朝は早起きして森の中をゆっくり散歩し、太陽の光をいっぱい浴びること

2.頭髪をきつく結ったり、窮屈な服を着たりせず、身体をのびのびと自由に動かせるよう 

 な、ゆったりとした服装で過ごすこと

3.冬の間に温めてきた計画などをどんどん始めること。新しく湧いてきた意欲はすべて生かして育てること

4.成長に役立つものはどんどん与えて、奪わないこと。

うまくいったことはどんどん褒めてうまくいかなくても責めたり、罰したりしないこともしこれらがうまくできないと、春がくれる新しい「生」が減り、夏には活力が落ちて、夏なのに冷え性に悩まされたりすることになります。春の早朝の森や庭に出て、朝日に照らされた無数の植物のステキな芽出しを見ることができます。

 一眼レフカメラをお持ちでしたら、ぜひ、ファインダー越しにのぞいてみてください。もちろん、カメラが無くてもかまいませんが、そのときはぜひ、地面すれすれまで顔を近づけて、小さな芽と同じ目線で見てあげてください。植物さんたちの力強いエネルギーが目から流れ込んできます。春のうちに植物さんからたくさん「植物エネルギー」をいただいておけば、一年中元気に過ごせるでしょう。植物たちの元気をいただきましょう。

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夏『蕃秀』
 夏は蕃秀(ばんしゅう)といいます。五運のうち「長」のステージです。蕃秀の「蕃」は植物が平らに広く枝や葉を伸ばすこと、「秀」はすらりと高い花茎や穂が伸びることをいいます。春に芽生えたものが益々勢い良くその枝葉を伸ばし、一年のうちで最も豊富な太陽の光と水を得て、植物たちはその命の頂点である花を咲かせ結実させます。
 植物たちが私たちに教えてくれる、夏の正しい過ごし方とは、

1.朝は早起きして、長い日照時間を有効に活用すること。ただし、特に日照りが厳しい時間帯は活動を休止して体力を無駄に使わないこと

2.なるべく愉快でさわやかな気持ちでいるように努めること。怒ったり興奮したりしないように注意すること

3.植物が花を咲かせるように、自分の中にある良いものを外に表現していくこと。計画を表に出し、考え、思いを相手に伝え、実現させていくこと

 もし、この逆の過ごし方をしてしまうと、夏がくれる「長」のエネルギーをうまく使うことができず、ひどい夏風邪を引いて秋、冬まで台無しにしてしまうことになります。
 夏の北方系生態観察園は陰陽がはっきりしています。太陽の当たるところは当然猛烈に暑いですが、木々たちの緑の葉っぱがいっぱいに茂って、分厚い層を作ってくれているので、森の中はひんやり、涼しいくらいなのです。ですから、特に暑さの厳しいお昼の12時から2時くらいの時間帯はクーラーの無い室内で汗をかきながら仕事をするよりは、森の中に入っていたほうがずっと健康的に過ごすことができます。植物さんも、大きな木の日陰で涼しそうにのびのびと育っているのを観察することができます。
 私は、夏の木々の葉っぱを通り抜けてくる緑色の光が大好きです。森の中から見上げると様々な木の様々な形をした葉っぱが太陽の光を受け止めて緑色に輝いています。その緑色は愉快でさわやかな気持ちにさせてくれ、怒気をはらって、落ち着いた気持ちにさせてくれます。

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・秋『容平』
 秋は容平(ようへい)といいます。五運のうち「収」のステージです。夏の間勢い良く伸びていたものがあるときぴたっと止まります(この転換点が五運の「化」です)。その日を境に気温が徐々に下がっていきますが、日が照ればまだ暑い日もあり、夕方は冷え込むなど、寒暖の差が激しい季節です。秋の空は高く澄んで、空気は乾燥し、風景は鮮明に美しく見えます。植物たちは成長しきったその体を変わらずに留めているように見えますが、日に日に増していく冷気によってゆっくりと成熟していきます。実は熟し、葉は色づいていきます。蓄えられた一年分のエネルギーを凝縮して冬の間貯蔵するのです。
 植物たちが私たちに教えてくれる、秋の正しい過ごし方とは、

1.日の出と共に起き、日が暮れたら早めに眠ること

2.新しいことは始めず、あせらずゆっくり、すでにあるものを大事に熟成させること

3.寒暖の差によって風邪を引いたりしないように、気持ちを引き締め、無理をしないこと

 これらを守らないと、秋のくれる「収」の機会でちゃんと収穫ができず、寒さからひどい風 邪を引いて冬を乗り切る体力を失うことになります。
 漢方では、人の健康というのは、『静かな湖上を風で流れる船のようなもの』だと説いています。風にさからってもいけないし、船上であわてて身体揺り動かしてもいけない。自然の流れの中にゆっくり身を任せよ。ということなのです。現代は季節感が無くなってきて年中せかせか働いている人が多いように思われますが、秋の声を聞いたらちょっと立ち止まって考えましょう。そして、これから始めようとしていることより、すでに手がけているものを完成させることの方に注意を向けて見ましょう。
 北方系生態観察園の秋はツクバネソウ、トチバニンジンなど、色々な植物の実が見所です。足しげく通っていると、春よりずっとゆっくりしたペースで、しかし、着実に変化しているのを感じ取ることができます。来年の春のための芽や花芽を準備しているのも観察できます。そして紅葉はあるとき急激に色づいてあっという間に散っていきます。北海道の秋は冬に追い立てられるように過ぎ去っていきます。

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・冬『閉蔵』
 冬は閉蔵(へいぞう)といいます。五運のうち「蔵」のステージです。秋の収穫を大切に貯蔵します。冬芽は長い冬の間風雪に耐えるために硬い殻を被ります。来年の豊かな腐葉土となるべくして地面に落ちた葉と発芽するためにばら撒かれた種子、良く太った根っこは分厚い雪の布団の下で眠りにつきます。太陽の光でも溶かすことはできない、完全な陰の世界に入ります。
 植物たちが私たちに教えてくれる、冬の正しい過ごし方とは、

1.夜は早く寝て、朝も日が昇ってある程度気温が上がるまでは床の中にいること

2.色々な思いがあってもあまり表に出さないこと、次の春までゆっくりと自分の中で温めておくこと

3.重労働や、精神的にぐったり疲れるようなことをなるべく避け、暖かい服装をして、皮膚から気がもれて逃げないようにすること

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 冬がくれる「蔵」ステージの過ごし方を間違えると、次の春までしっかり溜めておくべき「気」が失われてしまい、春に生まれる芽が貧弱なものになってしまいます。
 実は私は、冬だけは漢方の教えを守っていません。冬でも朝暗いうちから起きて職場へ行き、日の出を待って北方系生態観察園にカンジキを履いて撮影に行きます。防寒具の下は汗ぐっしょりになります。冬の観察園は積雪が数メートルもあるので、高い木の枝についた冬芽もすく近くで撮影できるし、なんと言っても新雪の上に自分の足跡をつけて森の奥へ進んでいくのが気持ち良いのです。私の撮った冬芽の写真をお見せしますので、皆さんは真似しないで下さいね。
 植物さんが私に教えてくれた最も大切なこと、それは「待つこと」でした。以前の私はせっかちで、待つことができない性格でした。でも植物さんは冬の間はじっと動かず自分にとってちょうど良い暖かさになるのを待ちます。そんな植物さんの写真を撮る私は、その年の花を撮り逃したら来年まで会えない、待つしかないのです。そして、待っているあいだに、愛は大きくなるということが分かりました。深い想いは次の春に爆発的に飛び出すエネルギーになります。四季の変化がはっきりしている北海道だからこそ大きな愛が育まれると私は思うのです。カメラも私にとっては『気のめぐり』を良くしてくれる理気薬の1つです。皆さんにとっての理気薬は何ですか?

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