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2008年7月24日 (木)

植物エネルギー 第216話 ~漢方薬用植物講座 「漢方に学ぶ病気予防 ~「気」とは植物~」~

 えりも岬での食育イベントにはじまり、7月が怒涛のように過ぎ去ろうとしています。さすがに先週末の連休は自宅で休息をとりました。今週末は今年8回目の襟裳岬、十勝、然別湖周辺の植物たちの勉強に行ってきます。

 本日は再び毎月北海道薬剤師会の機関紙「道薬誌」にい投稿している漢方薬用植物講座を掲載いたします。その4回目は~「気」とは植物~です。

「気」のめぐり
1.「気」とは植物
 5月号に引き続き「気」のお話をさせていただきます。前回、漢方薬の教科書には『「気」とは人間を生かすための生命エネルギーで目では見ることができない』と書かれているけれど、私は『「気」は目で見ることができる』とお話しました。具体的にお話しましょう。
 先ずは図1と図2を見てください。図1には、漢方についての一般的な教科書に書かれている「気」について簡単にまとめてあります。「先天の気」はともかく、私たちが地球上に生を受けてから自らが獲得していく「後天の気」には「天空の気」と
「大地の気」の2種類があって、それが肺でいっしょになって「真気」=「元気」になって全身を巡る。これがごく一般的な解釈ではないかと思います。「天空の気」とは簡単に言えば大気とか空気とか言ってもよいでしょう。一方「大地の気」とは「水穀の気」ともいい、口から取り入れる飲み物や食べ物のことです。それで「気」とは目でみることはできない・・・と書かれているのですが・・・。

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 ところで、私事で恐縮なのですが、私が13年前に北海道医療大学にお世話になって以来、特に最近5年間はカメラを持って野山へ出かけ、北海道医療大学・北方系生態観察園植物たちを中心に北海道の植物の勉強を精力的に続けてきました。2年前の5月初めの早朝、北方系生態観察園のカタクリをカメラのファイダー越しに見ていたら『「気」とは地球上に生きる植物(野菜、穀類、果物、山野草、樹木、海草、薬用植物)全てのことではないか?』と思い始めました。札幌市北区新琴似にある牧田病院の医師、今井純生先生に漢方を習って以来、香蘇散、防風通聖散、桂枝茯苓丸を飲み続けていましたので、漢方薬が効いているせいもあったのだとは思いますが、5年前95Kgだった体重が78Kgに減った上に、あれほど危険値すれすれだった血液検査も全てOKとなっていました。漢方薬が効いているせいもあったのだとは思いますが、植物たちと真面目に付き合うようになったのも元気になった大きな理由の1つではないかと思っていました。よく考えてみると、漢方処方に配されほとんどは植物(生薬)ですから、私の健康は西洋薬ではなく総じて植物のおかげといえると思っています。

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 さて、図2を図1と比較しながらご覧になって下さい。植物とは何かについて簡単にまとめてみました。大気と太陽の光を「天空の気」に置き換え、地面から吸い上げる水と栄養分「大地の気」とすると、この2つをいっしょにして、地球上のあらゆる有機生命体を生かすための根源的なエネルギーを提供し続けている素敵な生命体。それが植物です。逆に言えば、「地球上から植物がいなくなってしまったら、あらゆる有機生命体は絶滅する」ということになります。そして、これは科学・化学で証明するまでもない、地球上に生きる全ての人が理解できる当然の絶対真理です。従って、地球上のあらゆる植物が漢方でいう目に見ることのできる「気」そのものということになります。分かりやすい例をあげてお話しましょう。素敵な植物がたくさんいる森の中を散策したり、山へ登った時のことを思い返してみてください。全く見知らぬ人同士がすれ違っても「こんにちは」と互いに声をかけあったり、笑顔で会釈して挨拶するのが普通の光景です。逆に都会の植物全くいない高層ビルの中、アスファルトで敷き詰められた道の上で歩く人たちが互いに笑顔で挨拶する光景など見たことがあるでしょうか。素敵な植物たちの中にいると、目、耳、口、鼻、肌の五感を通して植物たちの元気が身体中に入ってくるのです。だから思わず笑顔になって、自ら自然発生的に何か良いことをしたくなって、人を信じることもできるようになり、挨拶をかわしたりするのです。地球レベルで考えても、争い事が絶えない国々には素敵な植物が少ないように思えます。
 さらに言えば、地球上から素敵な植物たちが減る ⇒ 地球は病んでいく ⇒ 病んだ地球には病んだ人間、動物が増え続ける。という考え方であまり矛盾はないように思えます。いかがでしょう。あまりにもマクロな見方かもしれませんが、人間の贅沢、お金、物質的な飽くなき「欲」が、地球に対する毒のようにも思えます。「薬」という字の草冠が無くなると「楽」という字になります。人類が飽くなき楽を求めると・・・地球上から草が無くなる。そう考えることはできないでしょうか。
 国、言葉、宗教の違いを超えて、人類全ての人が等しく愛することのできる可能性のあるもの。それが「植物」だと思います。ならば、身近な植物に目を向ける人が増える ⇒ 植物に対する愛が芽生える ⇒ 植物を大切にするところから自分の生活レベルを決めることができる人が増える ⇒ お金では買うことのできない感動という名の心のくすりを持った心のお金持ちが増える ⇒ 地球上にステキな植物が増える ⇒ 地球が元気になる ⇒ 前向きな人が増える。こんな良い循環を作ることが病気になる人を減らし、心も体も元気な人たちを増やすゆっくりだけど、一番確かな方法だと思います。

2.「気」のめぐり(理気)と香蘇散
 「気」についてのお話は一段落させていただき、次は『「気」のめぐり』についてお話します。
 せっかく素敵な「気」を取り入れても、それが全身に回らず滞ってしまうと精神活動をはじめとする生命を維持するために必要なあらゆる物質代謝へ悪影響を及ぼすことになります。漢方では「気滞(きたい)」、「気鬱(きうつ)」ということになります。 
 普通に社会生活していても、日々刻々と感情の起伏は生じますから、健常人から病気の方までその程度の差はあっても「気」の症状は普遍的にみられることになります。この『「気」のめぐり』を良くすることを漢方では理気(りき)といい、殆どの漢方方剤の中に理気薬は配されているのです。
 漢方方剤の中で典型的な理気剤を紹介しましょう。私も毎日欠かさずに飲み続けています。香蘇散(こうそさん)といいます。

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 素敵な5つの植物が混ざっています。5つの生薬の中で一番の主役が、皆さんよくご存知のシソ科の1年草の紫蘇の葉を乾燥させた蘇葉(そよう)です。赤紫蘇系と青紫蘇系がありますが、薬用には赤紫蘇系が用いられます。香附子(こうぶし)というのはカヤツリグサ科の植物の根茎部分を干したもので、とても良い香りがします。附子という名がつくので、猛毒のトリカブトを連想させますが、全く無毒な植物です。陳皮(ちんぴ)はコタツに入って食べる温州ミカンの皮を乾燥させたもので、通常数年は経過したもののことです。ちなみに「陳」とは古いという意味です。文字通り古い皮です。
 この3つの植物たちはどれもこれも良い香りのするものばかりで、身体全体の「気」をめぐらせてくれる働きのある理気薬です。身体全体に「気」が巡っていれば風邪(ふうじゃ)や寒邪(かんじゃ)などは身体の表面で撃退されるという理論です。だから、なにか喉がチクっとする感じ・・なんて時には朝一番に飲みます。邪が身体の中に入る前にステキな「気」をめぐらせておく。これが風邪(かぜ)予防の一番の秘訣です。生姜(しょうきょう)は私たちの身近にある生姜(しょうが)のことです。身体を温める作用があります。身体が冷える。これは一番邪が入りやすい状況です。四季を通して身体を冷やさないようにすることが病邪を身体の中に侵入させない防御方の基本です。甘草(かんぞう)はグリチルリチン酸という甘味成分を含有するマメ科植物の根茎部分で、多くの漢方方剤に配されるとても重要な植物(生薬)です。一般的に甘草の働きは、配される他の植物(生薬)どうしの働きをコントロールします。香蘇散においても、甘草は他の4つの植物たちが好き勝手に働き出さないように調和させるための重要な植物(生薬)です。なお下の図に君薬、臣薬、左薬、使薬という単語は漢方ならでは用語ですので、その意味については図に解説しました。ご覧になって下さい。君薬というのは、いわゆる殿様ってことですね。漢方方剤の中で主役を演じます。臣薬は殿様を支える重臣。佐薬、使薬の意味は図に書いてある通りです。なんと言っても。香蘇散のすばらしいのは、紫蘇の葉っぱが殿様ってことです。

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 ところで、あらためて皆さんに「紫蘇って何?」という質問を投げかけてみたいと思います。答えは・・・野菜ですか?生薬ですか?それともハーブ?はたまた日本的に薬味(やくみ)?・・・どれも正解です。ですが私の答えは・・・やはり植物です。紫蘇は重要な理気薬ですから、紫蘇(家庭的には青紫蘇の葉でもOKです)を食べて美味しいと感じる人は身体が欲している=「気」のめぐりがあまり良くないということですから、色々な紫蘇料理を食べることによって「気」のめぐりはある程度改善されます。乾燥した葉よりも生葉の方がその効果が大きいようです。ちなみに、私は通常状態で紫蘇を美味しいと思うことはないのですが、色々な人に「気」を使ったり、苦手な長時間の頭脳労働をした後(実は文章を書くのは大の苦手ですので本稿を書き終えた後)などはとても美味しく紫蘇料理をいただけます。「気」のめぐりが悪くなっているのでしょうね。
 さらに、香蘇散に対する西洋医学的な素朴な疑問・・・「いったい何が効いてるの?」、「どんな成分が効いてるの?」に対する答えは・・・全部!!ということです。逆に考えましょう。5つの生薬どれ1つ欠けても効かなくなるってことです。ステキな植物が5つ足し算されると・・・その答えは5以上になる。ということです。それが漢方薬、東洋医学的な考え方、哲学のすばらしいところです。
 講義に行く前、長距離運転をする前、いつもより声がかすれている時・・・香蘇散は、私の日々の生活の中で欠かせぬものの1つです。

3.「気のめぐり」と「心の元気度」
 さて香蘇散も『「気」のめぐり』を良くする理気剤でしたし、その主役をなす紫蘇単独でも、漢方では理気薬の1つでした。もう少しこの考え方を拡大してみましょう。口から取り入れてよい気持ちにさせるものは全て理気薬として考えることもできます。口から取り入れるものとは、私たちの毎日食べる食材全てのことを指しています。従って、毎日食べる料理に使われる食材全てが理気薬となりうるということです。人それぞれ好みがあって、その人が「美味しい」と感じるものは『「気」のめぐり』を良くする理気薬と考えることができます。例えばイチゴ、ミカン、リンゴ、ナシ・・・などの果物。口で感じる味覚の他に、食べた時の香りを「ステキ」と感じる人は、鼻から取り入れる『「気」のめぐり』を良くする、理気薬ということになります。この考え方をさらに拡大させると下の図に示した通り、口、目、耳、鼻、肌で「ステキ」と感じるものは全て『「気」のめぐり』を良くしてくれる理気薬と解釈できます。
簡単に言えば、五感で感じる「ステキ」なもの、いわゆる感動が潜在的に持っている生命エネルギーの源=「気」を動かす理気薬ではないかと考えることはできます。毎日、自分の身近な所にいくつ感動して生きているか、その感動の数が多いほどその人の心は「元気」と言えるのではないでしょうか。

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 私たちの口から取り入れる感動=食事について考えてみましょう。例えば日本人が白いお米を毎日当たり前のように食べることができるようになったのは1950年代になってからです。現代に生きる私たちは、そのころに比べると、飽食の時代と呼ばれるほどに、これまでの日本の歴史上、あり得ないくらい圧倒的に口からステキな「大地の気(水穀の気)」を毎日取り入れていることになります。だから、毎日ステキな「気」が発生していることにもなります。そのステキな「気」をきちんと何か前向きな行動を起こすためのエネルギーに使えているのかどうかが一番の問題かもしれません。ステキな「気」の行く場所がなくなってしまうと、それは邪気となって、身体の中に溜まり、漢方での「気」の異常、気鬱や気滞になるのではないかと考えています。ステキな物を食べる⇒ステキな「気」が発生する⇒ステキな物事に対して能動的にそのエネルギーを使う。この流れを自分で作ることが現代人にとって今一番求められていることのように思えます。
 これまでの日本の歴史上、圧倒的にステキなモノを食べているのに、それに対する感動や感謝もなく「当たり前」と思っているとしたら、それこそが一番の気の病になる原因ではないでしょうか。
 さらに科学・化学の発達によって、人類に脅威を与えていた感染症に対する対抗手段もできましたし、衛生状態も改善され、色々な方法で血圧、内視鏡検査、種々血液検査等で「身体の健康度」もチェックできるようになりました。それ自体はとてもすばらしいことです。ただ、「心の元気度」は科学・化学では苦手の分野のようで、全く手付かずの分野です。そもそも科学・化学を手段として用いる西洋医学では「人は皆同じ」という考え方が絶対的な基本となりますから、身体の異常を数値化できますが、漢方では、考え方も行動も全く同じ人などいるわけがないのですから、「100人の人がいたら全て異なる生命体」ということが基本となります。ですから「心の元気度」を一義的に数値化することなど不可能なのです。数値化しようとすることすら間違っています。
 「心身一如」、これは漢方ではとても重要で普遍的な考え方です。「身体の健康度」は科学的手段にお任せするとして、「心の元気度」については、全てが自分のことですから他人任せではなく、自己診断できるのではないかと私は考えています。まだまだ途中の段階なのですが、少しだけ皆さんに私の「心の元気度」自己診断方法を提案させていただきます。
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 いかがでしょう。これは私が北大薬学部時代に有機化学に没頭していた15年半を振り返っていて気がついたことです。ちなみに、その当時の血液検査値は血圧を除いて全てレッドゾーンだったことを付け加えておきます。
 今のところ9個しか思い当たらないのですが、この診断方法に賛同される方がいらっしぃましたら、ぜひ9番目以降、付け加えていただき、私の方に送っていただけるとうれしいです。皆さんもいっしょに考えていただけませんか?
 いずれにしても、「心の元気度」と『「気」のめぐり』、そして身体の健康は密接に連動しているようです。

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