« 植物エネルギー 第216話 ~漢方薬用植物講座 「漢方に学ぶ病気予防 ~「気」とは植物~」~ | トップページ | 植物エネルギー 第218話 ~大雪赤岳の植物エネルギー~ »

2008年8月 1日 (金)

植物エネルギー 第217話 ~漢方薬用植物講座 「漢方に学ぶ病気予防 ~「陰陽五行論~

 皆さんいかがお過ごしですか?2008年もついに8月です。先週末もえりも町に植物調査に行ってきました。今年は北方系生態観察園の植物たちにはごめんさいです。でもえりも町の植物たちのことを分かると、北海道の平地の植物の70%くらいはマスターできるような気がします。今年は最低あと3回は植物の勉強のために訪れるつもりです。それにしても、植物のライフサイクルに合わせて生活しているとあっという間に一年が去っていきます。うれしいやら悲しいやら・・です。

 一週間ぶりにブログを更新します。今回も漢方のお話です。ずばり「陰陽五行論!」です。

 富良野岳、大雪赤岳、旭岳、それとえりも町の植物たちについては、ブログ上に必ずアップします。現在編集中なので、もう少しお待ち下さい。

陰陽五行論

1. はじめに ~陰陽思想と五行論~
 今月のお話は、漢方の考え方の最も基礎をなす陰陽五行論について、私の解釈を思い切って本稿に掲載してみようと思います。漢方の修行を始めてまた日も浅く未熟な部分も多々あるかと思います。漢方を専門にしておられる先生方の温かいご教示をいただければ幸いと思いながら、筆を進めることにします。
 陰陽五行論は一言で言えば、古代中国を起源とする地上に存在する全てのものを説明しようとする哲学で、「森羅万象、宇宙のあらゆる事物の生成消滅といった変化は、陰と陽の互いに対立する属性をもった二つの「気」によって引き起こるとされる」という陰陽論と、「地球を形づくる5つの素材(元素)木・火・土・金・水(もく・か・ど・こん・すい)をあらしめ、働かせるエネルギー(気)、いわゆる五気がお互いに深くかかわりあっている」という五行論とが1つとなったものです。それが「正しい」、「間違っている」とかを論ずるものではなく、1つの考え方であるということを予め述べておきます。さらには、昨今声高に叫ばれている「科学的エビデンス」という考え方とは対極に位置する考え方です。
 この考え方は漢方の基礎となっているばかりではなく、運勢を占う東洋易学、十二支、暦などもこの陰陽五行論を基礎としているのです。さらには、パソコンの原理である二進法さえも陰陽論が基礎になっているのです。
 図1は大極図、陰陽太極図、太陰大極図ともいい、太極のなかに陰陽が生じた様子が描かれています。古い話ですが、昔のマッキントッシュ製のパソコンを使ってソフトを立ち上げると、その待ち時間に、この小さな印が画面上でクルクル回っていたのを覚えている方もいるのではないでしょうか。
 
         Blg_2

                     図1

 図1の黒色部分は陰を表し、白色部分は陽を表します。右側で下降する「気」を意味し、左側で上昇する「気」を意味しています。陰の「気」が極まれば、陽の「気」に変じ、陽の「気」が極まれば陰の「気」に変わっていくことを表しています。また、黒色の中央にある白い点は「陰中の陽」を示し、いくら陰の「気」が大きくなっても必ず陽の「気」がは残っていて、後に必ず陽に転じることを意味しています。また同じように、白色中の点は「陽中の陰」を示し、いくら陽の「気」が強くなっても、陽の中に陰の「気」があり、後に陰に変じていくことを表しています。図1は、これを永遠に繰り返すことを表しています。陰陽論では、宇宙レベルはともかく、地球レベルで考えても、人間そのものも地球上に存在する全てものモノの中1つですから、私たちが一日の中で変化する心や、気持ちの動き、体調の変化はあって当たり前、それは万物の中に流れる陰の「気」と陽の「気」に影響されることになります。
 皆さんもご存知のこととは思いましたが、図2に私たちの身近なモノの陰陽表を、一部抜粋して掲載しました。現代、あまりにも物質的文化(文明の方が正しいかもしれません)が、精神的文化を圧倒している感を持っているのは私だけではないでしょう。物質的文化は陽の「気」、精神的文化は陰の「気」に位置していますから、現在の日本、地球は陽の「気」が異常なほどに渦巻いていることになります。物質的文化(文明)を追い求め、先を急ぐのではなく、一歩足を止めて、置き忘れてきた精神的文化、陰の「気」を取り戻すことが日本はもとより全地球的に求められていることのように思えます。そしてそれが病んでいく地球の一番の特効薬になるように思えてなりません。
   Blg2_2

                     図2  

2.五行の相生・相剋と五行配当表
 それでは次に、五行の相生・相剋関係を図3と五行配当表(図4)の両方を見ながら本稿を読んでいただきたいと思います。
 繰り返しになってしまいますが、五行論の五行とは、万物を存在せしめる5つの元素、木・火・土・金・水(もく・か・ど・こん・すい)のことで、5つの元素の「気」が、互いに影響を与え合い、その生滅盛衰によって天地万物が変化し、循環する、という考えが五行思想の根源的な考え方です。図3に示しているように、相生(そうせい)と相剋(そうこく)の関係で5つの元素が影響し合っていると説かれています。相生の関係とは、良い「気」の流れを生み出すように影響する関係のことです。もっとくだけた言い方をすれば「気」をパワーアップする組合せのことです。「木を焼けば火を生じ(木生火)、火は灰・土を生じ(火生土)、土が集まって山となった場所からは鉱物(金属)が産出し(土生金)、金は腐食して水に帰り(金生水)、水は木を生長させる(水生木)」のように、それぞれの元素の「気」が循環すると、良い「気」のめぐりが生じ、万事スムーズに進むことになります(五行相生)。それに対して相剋の関係とは、お互いの「気」の流れを悪くしたり、滞らせたりするように影響する関係のことで、「気」を吸い取る、奪う組合せと言っても良いかもしれません。「水は火を消し(水剋火)、火は金を溶かし(火剋金)、金でできた刃物は木を切り倒し(金剋木)、木は土を押しのけて生長し(木剋土)、土は水の流れを堰き止めてしまう(水剋土)、という具合に、水は火に、火は金に、金は木に、木は土に、土は水にそれぞれ悪影響を与えてしまうように影響し合うと、何事もうまくいかなくなる(五行相剋)ということになります。木火土金水の五行と陰(月)陽(太陽)を合わせて陰陽五行論ということになるのです。
 いかがですか。ここまでは身近な題材ですので、「この事自体理解はできるが、実際の漢方全体と具体的にどう繋がっていくのだろう」と思われる方がほとんどではないでしょうか。私もそうでした。実は五行論はここからは本番なのです。五行論は五行(木火土金水)だけに留まらず、人間生活となんらかの関連ある全ての現象と物質を木火土金水の基本的性格に分けて、それぞれの「気」の相互関係を説明することによって、人間そのものを解釈しようとする方法論といえます。「人間に関わる全ての現象と物質・・・」とは、すなわち地球そのものですから、「人間が地球に生きている」のではなく「地球に人間が生かされている」、その理(ことわり)を説く1つの哲学といえます。さらには、地球上に生きる人間一人一人を銀河系、太陽系・・のような全く別の1つの小宇宙として考え、その全てを理解しようとする哲学ともいえるのではないかと思います。いずれにしても、「人間は全て同じ」という近代西洋医学、科学の基本的概念とは大きく異なることだけは間違いないでしょう。
 さて、「人間に関わる所持万端」を五行に分類したのが五行配当表です。図4には病気予防に関係ありそうな項目を11項目ほど抜粋してあります。この項目以外にも五声(病人の出す声の所属)、五液(分泌液の所属)、五主(五臓から栄養を補充するもの)、五支(五臓の精気の発する所)、五香(香気の所属)、五変(五臓の病変発現)、五腑(胆、小腸、胃、大腸、膀胱)、五位(八卦(易)の割り当て)、生数(五行発生の数理原則)・・・多項目にわたります。
 図3は五運行大論図の一部を抜粋して、五行の相生・相剋の関係と組み合わせたものを独自に作成してみました。図3と図4をご覧になりながら五臓・五腑を例に挙げてみましょう。肝・胆の「気」の流れが良くなれば、心・胆の「気」が上昇し、そうすると脾・胃の「気」も良くなり、そして肺・大腸→腎・膀胱、やがては肝・胆への良い「気」が流れ、五臓全体に「気」の良い循環が生じるということになります。これが相生の関係です。逆に、肝・胆の「気」が下がれば(害すれば)、脾・胃→腎・膀胱→心・小腸→肺・大腸→肝・胆へと「気」の流れが悪くなり、五臓全体の「気」が低下することになります。
 図3についてもう少し説明を加えることにしましょう。五臓の中で肝は木性、心は火性、脾は土性、肺は金性、腎は水性の臓器に分類されます。図3の肝はこう説明されます。すなわち「東方から風が起こり、風は木を育て、木は酸を生む。そして酸味は五臓のうち肝へ入りやすく、肝の「気」を調えることになる。」そして肝の気が調えば、先に述べた相生の関係で心→脾→肺→腎へと良い「気」の流れが生じることになる。そのように解釈していきます。以下心・脾・肺・腎も同様に説明されます。「西洋医学・科学では悪い原因を探し出し、それを正す、除去する」という考え方ですが、陰陽五行論を基礎とする漢方では、何か物事が悪くなるにしても良い方向に進むにしても、「その理由、原因を1つに限

定するのではなく、様々な要因が複雑に影響しながら起こる」ということになります。故に病気の原因もただ一つだけではなく、その解決方法も色々な方法を組み合わせることが可能なのです。多くの漢方方剤には複数の生薬が配されるのはこのことからも理解できます。
 私の常備漢方薬の1つ、防風通聖散などは18種類もの生薬が配されています。その全ての構成生薬は全て五味に分類されています。もちろん防風通聖散は私の「証」に完全に合った漢方方剤で、4年間飲み続けていますが、多大な効果があったことは間違いない事実です。防風通聖散は「堀田の身体」という小宇宙には、図3に示されていること以上に様々な角度から霊妙な技によって、五臓の「気」を循環させてくれるような気がしてなりません。

Blg3

                     図3

Blg4

                   図4

3.五行配当表についての解釈
 本誌5月号の中で薬というのはなにも「口から飲むものだけではない」ということをお話しましたが、正に陰陽五行論そのものであることがお分かりいただけるのではないでしょうか。何か身体に良いからといってそれだけを食べ続けると、それはやがてどこかの臓器の「気」のめぐりを悪くすることになることは容易に想像できます。病気予防の極意は、自分の小宇宙(心と体)のタイプを理解して、その小宇宙に足りなくなったものを補い(補する)、余分なものを削り(瀉する)ながら陰陽のバランスを保つことです。
 五行配当表(図4)についてもう少し詳しくお話したいと思います。
 先ずは五臓と五色。五臓の病変は皮膚(特に顔面、前額部、眼瞼)の色である程度判断できるとされています。肝の病では青く、心の病では赤く、脾の病では黄色く、肺の病では白く、そして腎の病では黒く変わるとされています。
 二番目は五臓と五味。酸の物は肝の衰弱を助ける(過食は筋肉に悪影響を及ぼします)。以下同様に、苦の物→心の衰弱(過食は乾燥肌)、甘い物→脾の衰弱(過食は骨を痛める)、辛い物→肺の衰弱(過食は筋を痛める)、鹹(しん、塩辛いの意)の物→腎の衰弱(過食は血液の異常)となります。この事は、五味についての偏食は体の調和を乱すということです。
 三番目は五臓と五気(五悪)。五臓にはそれぞれ嫌がる気象現象があり、肝は風、心は熱(暑)、脾は湿、肺は燥、腎は寒。健康維持のためには、気候の変化に順応することが肝要です。ちなみに、四方を海(水)に囲まれ、毎日水をがぶ飲みする日本人の多くは、湿邪によって慢性的に脾虚(脾の「気」が虚している)の方が多いのです。
 四番目は五臓と五志。肝は怒を、心は喜を、脾は思を、肺は悲を、腎は恐の感情を生み出す臓器ですが、飛びぬけた激しい感情を感じると、その感情を生み出した臓器を逆に傷つけると説いています。満遍なく5つの感情があると、それは五臓の栄養になりますが、突出した1つの感情に長く支配されると五臓の「気」の流れが悪くなります。日々、5つの感情をきちんと取り戻すことも健康維持、病気予防の薬と言えましょう。
 最後に中国の四神について。中国大陸中央部から見て、北を守る神は玄(げん)武(ぶ)、東は青(せい)龍(りゅう)、南が朱雀(すざく)、西が白虎(びゃっこ)です。北は寒邪、東は湿邪(東シナ海の水)、南は熱邪(南方の暑さ)、西の燥邪(砂漠)の元でもありますから、それに対する守りでもあります。真武(玄武)湯、小青竜湯、十棗(朱雀)湯、白虎湯と四神の名のついた漢方方剤もちゃんと存在します。詳しくはいずれ。
 紙面上で言葉足りない部分が多々あったかと思いますが、ご容赦ください。あと最低5回の執筆が残っていますので、随時補足しながら続けていきたいと思っています。

|

« 植物エネルギー 第216話 ~漢方薬用植物講座 「漢方に学ぶ病気予防 ~「気」とは植物~」~ | トップページ | 植物エネルギー 第218話 ~大雪赤岳の植物エネルギー~ »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 植物エネルギー 第216話 ~漢方薬用植物講座 「漢方に学ぶ病気予防 ~「気」とは植物~」~ | トップページ | 植物エネルギー 第218話 ~大雪赤岳の植物エネルギー~ »